第2章 Act.2
悠鬼が男子バスケ部のマネージャーになって、初めての朝練が終わると紫原は制服に着替えて、体育館の出入口で悠鬼が来るのを待っていた。
「ムッ君?どうしたの?」
「桃ちん……悠ちんは?」
「悠鬼ちゃんならもう教室に言ったよ」
「えぇ~」
いつもダラダラしている紫原も、今回ばかりはのんびりして居られないと、練習が終わって直ぐに着替えて悠鬼が来るのを待って居たが、桃井の言葉に脱力してしまう。
(どんだけ早いんだよ)
「ムッ君、悠鬼ちゃんね。去年女子バスケ部に居た頃……凄く厳しくて気の強い印象だったの、あまり話した事無かったからちゃんとは知らないけど……でもムッ君と居る時の悠鬼ちゃん、やっぱり女の子だなぁーって思ったの!」
「?……悠ちんは女の子だよ?」
「そう?」
桃ちんの意味深な言葉と表情に、まだ中坊の俺には何を言っているのか意味が分からなかった。
ただ俺は悠ちんに笑っていて欲しい……そう思っただけなのに、俺が泣かせたんだよね。
その頃の悠鬼は教室には行かず、屋上のペントハウスの陰に両膝を抱えて縮こまって居た。
教室に行ったら席が隣同士なので、紫原と確実に会うし逃げられない。
『……あからさまだったかな』
ーガチャー
ービクッ!!ー
屋上の扉が開いて誰かが入って来た音に、悠鬼は肩を跳ね上げて盛大に驚いてしまう。
気付かれない様に静かに動き、入って来た相手を視界に入れる。
『緑間くん?』
「彩條、こんな所で何をしている。もう直ぐ授業が始まるのだよ」
『緑間くんだって……サボり?』
「俺がそんな事する訳ないのだよ……さっきの事か?」
『……うん』
そう言いながら緑間は、悠鬼の傍に立って話しを聞こうとして居る。
実際に緑間ときちんと話した事のない悠鬼は、少し戸惑ってしまうが素直に相談に乗って貰おうと思う。
紫原と仲良くなったとは言え、日が浅い二人はお互いに知らない事だらけなのだ。
『どう接したら良いのか分からなくなっちゃって、このまま顔を合わせたら嫌な想いさせちゃうし……むーちゃんの事怖いって思うなんてっ……』