第2章 Act.2
「仕事の内容はね……」
『うん、ありがとう!桃井さん』
翌日の朝練から悠鬼は同じマネージャーの桃井さつきに教わりながら、マネージャーの仕事をこなして行った。
彼女は物覚えがとても良く、気も利くので部長である赤司や部員達からも好印象だ。
ただ部活中に抱き付くと、悠鬼は凄く怒るので紫原は少し面白くない。
同じ部活ならいつでも甘えられると思っていた大きい子供は、少し口先を尖らせて拗ねる。
チラチラと悠鬼の様子を見ていた紫原の視線の先には、彼女に近付く一人の男が入って来た。
「あっ?……何だ、悠鬼じゃねぇか。お前、女バス辞めてマネージャーになったのか?」
『は、灰くんっ……う、うん』
遅刻して来た灰崎将吾は、コートの隅で仕事をして居た悠鬼に近付いて行く。
灰崎を見た悠鬼は苦笑いして後退りするが、灰崎は逃がすまいと相手の腰に腕を回して強引に引き寄せる。
そして悠鬼の顎に指を掛け、クイっと上を向かせた。
「漸く俺の女になる気になったかァ?」
『もう!だからならないって言ってるでしょ!』
「そうそう、崎ちんにはあげな~い」
「あ"?……何だ、敦」
一部始終を見ていた紫原は、直ぐに二人に近付いて灰崎の腕から悠鬼を助け、自分の腕の中に隠す。
一気に不機嫌になった相手を、紫原も負けじと威嚇する。
「悠ちん口説くの禁止~……気安く触らないでよね」
「あ"?……お前等付き合ってんのか?」
「付き合ってないよ」
「なら敦が口出す事ねぇだろ!俺は去年から口説いてっ」
「灰崎、早く着替えて練習に入れ……紫原も」
「は~い」
「チッ」
先輩に注意されて灰崎は渋々部室に向かって行く。
それを見送った後紫原は悠鬼を少し離し、頭を撫でながら屈んで顔を覗き込む。
『ありがとう、むーちゃん』
「どういたしましてぇ」
「つーか、お前去年から口説かれてんのか?」
『うん、女子バスケ部に来て時々迫られるの……何回も断ってるんだけど』
「灰崎が無理強いをしないのは意外なのだよ」
「いや、してたろ」
『ううん!灰くん、あれ以上の事はして来ないの……でも何で私にしつこいのかな?』
「悠ちんが可愛いからじゃない?」
「「!?」」