第1章 Act.1
「おい、紫原。あいつはお前の彼女かよ?」
「違うよ~」
「それにしては良い雰囲気だったのだよ」
「う~ん、彼女じゃないけど……悠ちんは好き~」
「付き合わねぇのか?」
「付き合う?……ん~」
練習に戻った紫原は、チームメイトの青峰大輝と緑間真太郎にそう言われて、改めて入口に立ってる悠鬼を振り向いて見る。
確かに彼女と居るのは楽しいし、心地良くて温かい。
自分に向けて来る笑顔が可愛くて、とっても大好き。
大好きな事には変わりないけど、恋人になってキスしたりエッチしたりしたいかって言われたら、やっぱりそういうのとは違う気がする。
そういう事じゃなくて、ただ純粋に笑顔の君の傍にいたい。
それだけなんだよねぇ~
「彼女は彩條悠鬼さんだね?紫原」
「赤ちん知り合い?」
「知り合いって言うか、以前女子バスケ部を見た時があってね。彼女は一年でキャプテンを務めていた」
「そんなに強ぇのか?」
「あぁ、チームの司令塔としてとても貢献していた……まぁ、使えなくなったらそれまでだけど」
そういう赤司征十郎の目は、少し冷たさがあった。
以前はいくら強かったとしても、それは去年までの話しだと言った。
しかし、赤司は悠鬼の視野の広さ、状況の判断力を高評化しているらしい。
実際、部内の練習試合中、彼女はじっと集中して紫原達を見ていた。
それはいつもの可愛い彼女からは想像出来ない程、とても鋭く真剣な表情だった。
(あの悠ちんにはあまり近付きたくないなぁ……)
「彩條さん、少し良いかな?」
『……えっ……あ、赤司くん?……何でしょう?』
最後まで部活を見学していた悠鬼は、どうせなら一緒に帰ろうと紫原を待って居た。
それに気付いた赤司は、彼女に近付き声を掛ける。
赤司と初めて話した悠鬼は、少し驚きながらも彼と向き合う。
「君が女子バスケ部を辞めたと聞いて……もし、まだバスケに携わって居たいって思ってるなら、ここでマネージャーをやって見ないか?」
『マネージャー?』