第3章 Act.3
帰り際、一人空を見上げて茫然とする灰崎。
初めて彼に見せた悠鬼の本音。
今まで自分にあんな事言って来る女が居ただろうか。
本気で悠鬼に惚れていた訳じゃないし、バスケだって好きでやっていた訳じゃない。
だが悠鬼の泣き顔を見た時、本気で自分の女にしたい……そう思った。
「いつか絶対ぇ落としてやるよ……悠鬼……」
その日の放課後、部活が終わり体育館には誰も居なくなった頃。
悠鬼は一軍が使っている第一体育館に一人で来ると、静かに倉庫に近付きバスケットボールを手に取る。
ボールを持ってゴールの下まで行き、両手で構えて肩に力が入らない様に投げる。
『あっ』
現役の頃なら3Pの得意だった悠鬼は、結構な距離からでも入れられた。
しかし今はゴール枠に当たるだけで、中に入れるのが難しくなっている。
『やだ……凄く下手……』
「パンツ見えちゃうよ~」
『え!?』
制服姿でやって居たので、背後から不意に掛けられた言葉に慌ててスカートを押さえる悠鬼。
後ろを振り向くと少し離れた場所から、しゃがんで口に両手を添えて声を掛けている紫原が居た。
『下履いてるから大丈夫だよ!……それよりむーちゃん、先に帰って良いって言ったのにまだ居たの?』
「悠ちんが怪しかったから付けてたの~……バスケやりたくなっちゃった?」
『そ、そんなんじゃないよ!ボールが片付いてなかったから……』
「ふ~ん」
悠鬼が何故嘘を吐くのか、それは紫原には分からないしやりたいと言われても、自分には試合に出させてやれる権力もない。
紫原は荷物を置いてブレザーを脱ぐと、悠鬼の方に近付いて来る。
『何?』
「悠ちん、ゴールの方向いて」
『?』
制服を脱いで近付いて来る紫原に、悠鬼は不思議な顔で小首を傾げ、何をしたいのか理解出来ないまま相手に言われた通り、悠鬼はゴールの方に身体を向ける。
すると不意に脇を掴まれて躰を持ち上げられてしまう。
『きゃぁあ!?』
「悠ちんっ……体育館だから声響くッ……」
『イヤー!下してー!』
「ここからならシュート出来るでしょ?」