第3章 Act.3
悠鬼が男子バスケ部のマネージャーになり、少しして黒子テツヤという同い年の陰の薄い部員が入部して暫くの事。
『灰くんが退部!?』
「あぁ、部活には中々来ねぇし……この間も暴力事件起こしたからな、赤司が強制退部させたんだとよ」
『……そんなっ……』
「何だよ、悠鬼……お前あれからも灰崎に口説かれて迷惑してたんだろ?……なのに何でんな暗い顔すんだよ。」
放課後の部活の時間になり、準備をしていた悠鬼は灰崎の退部を青峰の口から聞かされる。
悠鬼がマネージャーになった最初の頃、紫原に「触るな」と睨まれたのにも関わらず、灰崎は懲りずに何度も紫原の目を盗んで悠鬼を口説いて居たのだ。
『迷惑だったんだけど、勿体無いなぁって……青くんはそれで良いって思うの?』
「良いも悪いも決めるのは赤司だろ?」
『まぁ、そうだけど……』
赤司が一度決めた事を覆す事は滅多に……いや、絶対にないだろうと思っている二人。
灰崎のして来る事が迷惑じゃないと言ったら嘘になる。
それが紫原に見付かった日には、中々機嫌が直らず宥めるのも面倒臭い事になるのだ。
それでも悠鬼は、放って置けず初めて自分から灰崎に会いに行く事にした。
焼却炉で灰崎を見付けた悠鬼は、慌てて近付きバッシュを捨てようとしている手をガシッと掴む。
現れた悠鬼に一瞬驚いた顔を見せるが、灰崎は直ぐに眉を顰めてあからさまに不機嫌顔を浮かばせる。
「何だよ……放せよ」
『辞めろって言われたから捨てるの?あれだけ出来るのに勿体無いよ!灰くっ……ん……』
靴を持っていない方の手で、悠鬼は顔を掴む様に口を覆われてしまう。
「うるせぇよ、こういう時だけ同情か?憐れんでんのか?……ふざけんなよテメェ……」
『灰くん……私が女子バスケ部を辞めた理由聞いた?』
「あ゛?知るかよ」
『こんな灰くんに同情なんか出来ないよ。これだけバスケが出来る身体持ってるのに自分から棒に振ってッ……』
「悠鬼ッ……」
『私は怪我してやりたくても出来ないんだよ!やらないんだったら私と身体を交換してよ!……灰くんのバカー!!』