第2章 Act.2
「スッゲー嬉しかったんだよねぇ、悠ちんがマネージャーになってくれた事……それを俺が壊しちゃダメだよねぇ……」
『むーちゃん……』
腕の中に抱き締めた悠鬼の頭を、慰める様に優しく撫でながら紫原は話し続ける。
鼻水を啜る音が微かに聞こえているので、彼の声色は普段よりずっと柔らかく聞こえて来る。
それがまた悠鬼の目尻を熱くさせ、更に涙を流させてしまう。
「崎ちんが悠ちんをヤッたら捨てるとか言うから……泣き顔も可愛いけど、悠ちんには笑ってて欲しいなぁ~……俺の隣で」
『……っ……守ってくれたの?……ありがとう、むーちゃん!大好き!』
「!?……お、俺もっ……」
ーキーンコーンカーンコーンー
『あ!一限目終わっちゃった!……むーちゃん、教室戻ろう?』
授業終了のチャイムに、紫原の言葉は遮られてしまった。
彼の腕から抜け出して立ち上がり、手を差し出して来る悠鬼。
見上げると紫原の大好きないつもの笑顔を向けてくれる。
紫原は差し出されたその小さな手を掴み立ち上がると、一緒に屋上の階段を降りて行くのだった。
「悠ちん」
『ん?』
「まだ怖い?……バスケ……」
『うん、ちょっとだけ……でも大丈夫!』
「怖くなったら俺のとこおいで?……ぎゅってしてあげるから~」
『うん、ありがとう!……むーちゃん』
「……っ……」
階段の途中で足を止め、紫原は大きく両腕を広げて受け入れる気満々で、下に居る悠鬼に告げる。
目を細めてまるで愛おしい者を見るかの様に、悠鬼は柔らかく微笑みを浮かべる。
その表情は初めて見るもので、紫原の胸の奥をきゅんと高鳴らせるものだった。
(……だから、何なの?これ……)
ー翌日ー
『昨日はありがとう!ミドちゃん!』
(ミドちゃん!?)
「彩條、その呼び方はやめろ」
『えぇー!だってミドちんとかミドリンとか呼ばれてるじゃない!……私も親しみを込めてっ……』
「お前と親しくなった覚えはないのだよ!だから紫原!睨むな!!」