第5章 モデルさんと海常高校
誠凛のベンチに戻り、ドリンクやタオルの確認が終わった頃に審判の声がかかった。
それぞれの学校の選手がコートに入る。
コートに入った涼太にさっきまでの雰囲気はなく、
モデルとは思えない迫力だ。
……と、思ったのに。
女子たちの黄色い声に答えるように手を振り、
ファンサービスをする涼太。
へらりと笑ってこちらにも手を振っている気がするが、見なかったことにする。
……さっきまでのかっこいい表情は何処へ。
呆れ顔の笠松先輩と日向先輩がなにか話していたけれど、一言二言話したところで、いまだ手を振り続ける涼太に向かって走って行く笠松先輩。
「てめぇもいつまでも手とかふってんじゃねぇ!しばくぞ!」
「ってぇ……もうしばいてるじゃないスか〜!笠松せんぱ〜い!」
笠松先輩の蹴りが炸裂。
この2人の絡みは面白いな、なんて思っていると、
ようやく試合再開のホイッスルが鳴った。
さっきとは全く違う海常の動き。
数十秒もたたないうちに、涼太のダンクが決まった。
「バカ野郎!ゴールぶっ壊せって言っただろうが!!」
「すいませーんっ!」
笠松先輩の怒鳴る声と、ギャラリーの女の子たちの
キンキンした高い声を遠くに聞きながら
ボールがくぐり抜けたゴールを呆然と見つめる。
威力は火神より上……。
ぼーっとしている暇もなく、黒子くんのパスが通り、
お返しだと言わんばかりに火神がダンクを叩き込む。
「こっちも全開で行くぞーっ!」
「「「おぉ!!」」」
あれから火神と涼太による点の取り合いが続くコート内。
火神がムキになればなるほど涼太はそれ以上のプレーをして、めまぐるしく攻守が変わっていく。
「まだ始まって3分だぞ!?」
小金井先輩の言葉にはっとして時間を確認する。
「うそ……」
涼太以外の4人の強さも伊達じゃなくて
ただでさえいっぱいいっぱいなのに
このハイペースのままじゃ………。
「あの……っ」
タイムアウトをとるか相談しようと隣を見ると、
リコ先輩は既に動いていた。
「誠凛、タイムアウトです」