第5章 モデルさんと海常高校
「よっしゃぁぁ!!」
ゴールを決めてガッツポーズをする火神。
私もなにか声をかけようと息を吸い込んだときだった。
火神の右手にありえない物があって、その場で固まる。
「え…………」
口から出たのは小さく息を吐く音。
私は口を開けたまま震える指で火神の右手をさす。
「あ”?……んだよ………………ってうわぁっ!?」
不機嫌そうに私の指差す方向を見た火神だったけど、
自分の右手を見た瞬間、驚きに声を上げた。
火神の手の中にあるのはゴールのリング。
「おぉぉゴールぶっ壊しやがった!」
「嘘だろ信じらんねぇ!」
練習だった部員たちの手も止まり、体育館がざわめく。
コート内にいた選手も集まって
まじまじとゴール……があった場所を見ている。
「あっぶねぇ……ボルト一本錆びてるよ」
いやいや!突っ込むところそこですか伊月先輩っ!!
「それでも普通ねぇよ……」
海常主将さんの言葉に激しく同意しつつ、
リコ先輩と監督さんの元へ歩く。
「すいませんでしたーっ!」
「ほんとにすいませんっ!」
「すいません。ゴール壊しちゃいました」
リコ先輩と頭を下げていると、黒子くんの声がして顔を上げた。
丁寧に頭を下げている彼と、壊したゴールを担いだ火神。
「これじゃ試合にならないんで、
全面側のコート、使わせてもらえませんか?」
黒子くんの言葉に、監督さんがすごい形相でこちらを睨んでくる。
監督さんが私の方ばかり睨んでいたのは気にしないでおこう。
続いて私は海常の主将さんの方へ駆け寄り、頭を下げた。
「ゴール壊してしまってすいません!
あの……っ、コートの準備お手伝いさせてください!」
「あ……いや……」
一歩後ろに下がったかと思うと、
眉を寄せ、視線を合わせようとしない主将さん。
やばいめちゃくちゃ怒ってる……!!
どうしたらいいか分からずもう一度声をかけようとしていると、背後からこちらへと駆けてくる足音。