第5章 モデルさんと海常高校
このあとは更衣室へ移動かな?
なんて考えながら様子を伺っていると、海常の青いユニフォームに着替えている黄瀬くんが見えた。
「黄瀬、なにユニフォーム着とるんだ?お前は出さんぞ」
監督さんが黄瀬くんにむかって言う。
…黄瀬くんは出さない……?
「各中学のエース級がごろごろいるウチの中でも、
お前は格が違うんだ。」
「ちょ、監督やめて!そういう言い方マジやめて!」
必死に言う黄瀬くんだけど、監督さんは聞いていない。
……監督に敬語使わないとかどうやって育ってきたの。
「お前まで出したら試合にもならなくなってしまうだろう」
なに、その言い方。
誠凛メンバーの顔つきが変わる。
「言ってくれるねぇ……」
「久々にカチンときた」
日向先輩と伊月先輩のいつもより低い声。
水戸部先輩も土田先輩もいつもの温厚そうな雰囲気はなくて、小金井先輩の猫っぽい口がきゅっとしめられている。
そこへ慌てて黄瀬くんが駆け寄ってきた。
「すいません!マジすいません!ベンチには俺入ってるから!あの人ぎゃふんと言わせてくれれば、たぶん俺出してもらえるし」
監督さんを指さして困ったような表情を見せたかと思えば、またすぐに挑発するように余裕綽々の笑みを浮かべてみせた。
「……それに、そもそも俺を引きずり出すこともできないようじゃ、キセキの世代を倒すとか言う資格もないしね」
その言葉を聞いた途端、リコ先輩が体育館の出口へと体の向きを変えて、更衣室へと移動を始めた。
無言でそれに続く私たち。
遠くから監督さんの声が聞こえたけれど、
私も含め、みんな聞く気はないらしい。
「アップはしといてください。出番待つとかないんで」
「絶対ぎゃふんと言わせるからね」
体育館を出る間際、黒子くんが言ったので
私もそれに便乗しておいた。