第5章 モデルさんと海常高校
「どーもっスー!!」
前方から聞こえる声に、黒子くんの脇から顔をのぞかせると、モデルさんスマイルをふりまいて走ってくる黄瀬くんが見えた。
「広いんでお迎えに上がりました♪」
「どーも!」
黄瀬くんにぺこりと頭を下げたリコ先輩。
さっきから火神がなにか話しかけようとしている気がするけど、黄瀬くんは無視して黒子くんに駆け寄る。
「黒子っち〜ウチにおいでって言ったのにあんなにあっさり振るから……毎晩枕を濡らしてるんスよ〜も〜!」
「なんなんだアイツ……」
黒子くんに向かって泣き真似をする黄瀬くんを見て
呆れたように言った日向先輩。
「さっさと案内しろ!」
「俺女の子にも振られたことないんスよ〜?」
「さらっと嫌味言うのやめてもらえますか」
火神を無視して会話をすすめる黒子くんと黄瀬くんの様子をぼーっとながめる。
「……だから、黒子っちにあそこまで言わせるキミには
ちょっと興味あるんス。」
そう言って本日初めて火神と向かい合った黄瀬くん。
空気がピリッと変わる。
「…キセキの世代なんて呼び名に別にこだわりとかはないんスけど……。あんだけはっきり喧嘩売られちゃぁね。俺もそこまで人間できてないんで……悪いけど、本気でぶっ潰すっスよ」
「はっ……おもしれぇ……」
黄瀬くんの挑発するような言葉に火神が低く笑った。
「……ってか、奏っちのそのバッグ、
でかすぎねぇっスか?」
しばらくの間のあと、急に振り返ったかと思えば
笑いをこらえるようにして呟いた黄瀬くん。
「……!このバッグには大事なものがつまってるの!」
「だって……はじめてのお○かいみたい……
まさか、おまもりのうさぎのぬいぐるみが入ってるとか……」
黄瀬くんの言葉で誠凛メンバー数人が吹き出した。
あの水戸部先輩でさえ肩を震わせて笑いをこらえている。
「うるさいっ!時間ないんだから
早く案内してくれますかねぇ!?」
私がキレながら言うと、はいはい…、なんて子供を宥めるように頭をぽんぽんしてきて、さらにむかついた。
……しかも、そんな仕草も様になっていてかっこいいから
もっともっとむかつく。
モデルでちょっと顔が整ってるからってさ!
調子に乗るなよ!!
心の中で叫びながら、練習試合を行う体育館までの道を歩いた。