第5章 モデルさんと海常高校
「あのー……森本真実っス。
奏ちゃんなら知ってるっスよね?」
「……知っていますがなにか?」
「そんなに警戒しないでくださいっスよ~。
で、まさみっちがモデルやってるのも知ってるっスよね?俺とまさみっちはその事務所の同期なんスよ。」
あー……そんなこと話していたっけ。
ようやく落ち着いてきたので水戸部先輩の横に出る。
「だからってなんで知ってるんですか黄瀬涼太くん」
「もう!その敬語とフルネーム呼びやめてくださいっスよ〜!この前の撮影のとき、まさみっちが同じクラスで面白い子がいるって言って、写真見せて教えてくれたんスよ!んで、その顔を覚えていたっス!」
「だからってなんで写真なんて撮るんだよっ!!」
火神が今にも飛びかかりそうに吠える。
「いやー、まさみっちが奏ちゃんとのツーショットがないって嘆いてたから、この写真を見せて自慢しようと思って!これでまさみっちをぎゃふんと言わせるっス!」
拳を握る黄瀬涼太くん。
あれ……?写真って……。
「そのー…森本さん、だっけか?その子が黄瀬に新沢さんの写真見せたから顔を覚えてたんだろ?そのときの写真はなんなんだよ?」
私が悩んでいると、首を傾げて日向先輩が言った。
たしかにそうだ。私は写真に映るのがあまり好きじゃないから、真実ともまだ写真撮ったことなかったんだ。
「分かんないっスけど……メロンパン食べてる写真で、“これはミラクルショットだからね!”とかって……」
メロンパン……。
……………………………………。
「あぁっ!!」
私が突然大声をあげたせいで水戸部先輩がビクッと
肩を跳ねさせた。
「新沢さん、どうかしたのか?」
伊月先輩が不思議そうに尋ねてきたけれどそれどころじゃない。
たしかあの日、真実はお昼ご飯中なのにずっと携帯をいじってて、マネージャーさんからの大事な連絡って言ってたから気にしてなかったけど……。
「盗撮じゃん…………」
水戸部先輩はがっくりと項垂れた私の頭を
優しくぽんぽんと撫でてくれる。