第5章 モデルさんと海常高校
「ほらほら!怖い顔しないで!もっと寄って欲しいっス!」
いつの間にか携帯を取り出していた黄瀬くんに
肩をグイッと引かれて距離が縮まった。
「え、ちょ、あの……」
「おい黄瀬ぇ!!」
火神がなんだか怒鳴っている気がしたけれど
そんなのよく聞こえない。
いくら私を小学生扱いしたムカつく相手だといっても、
相手はモデル。もちろんイケメンさんなわけで、
こんなのに耐性のない私の心臓は爆破寸前だ。
火神が今にも殴りかかりそうなのを抑えるので1年生は手一杯だし、2年生の先輩方もぽかーんとしていて助けてくれない。
なんとか開放してもらおうと体をよじるけれど
思ったよりガッチリと肩を掴まれていて動けなかった。
「はいはい笑ってー!はい、チーズ!」
掛け声に合わせてつい笑顔を浮かべてしまう。
……いや、変な顔で写真映るのはいやだし…………。
「よし撮れたー!」
「ふぅ……………………って、うひゃぁ!?」
ようやく開放してもらえたかと思うと、
今度は火神に強引に腕を引かれた。
びっくりして火神を見上げる。
「え……火神…………?」
「あ……悪ぃ。いや、なんつーか…………なんでもねぇ」
ガシガシと頭をかいてぶっきらぼうに言うと
掴んでいた手を離した火神。
近くにいた水戸部先輩の後ろに隠れながら
うるさい心臓をどうにかするべく深呼吸を繰り返す。
「それより……黄瀬くんはなんで新沢さんのことを
知っているんですか」
毎度のごとくどこから出てきたか分からない黒子くんが言った。
いつもなら声を出して驚いているところだけど、今は既に心臓が大変な事になっているのでそんな余裕はない。
「あー、この学校にまさみっちがいるのは知ってるっスか?」
撮った写真を満足そうに眺めてから携帯をしまった彼の言葉に、誠凛メンバーは首を傾げる。