第5章 モデルさんと海常高校
「これがキセキの世代……。黒子、お前の友達すごすぎねぇ?」
全員が呆然と火神と黄瀬涼太くんを見ている中、
河原くんが黒子くんに言った。
「あんな人知りません。……正直さっきまで、僕も甘いことを考えていました。でも数ヶ月会ってないだけなのに、予想を超える速さで、キセキの世代は進化してる」
黒子くんが拳に力を入れながら話す。
キセキの世代……、こんなのがあと四人も……。
「ふー……。これはちょっとなぁ……。」
しんと静まる体育館に、黄瀬涼太くんの声が響いた。
「こんな拍子抜けじゃ、やっぱ挨拶だけじゃ帰れないっスわ。やっぱ、黒子っちください。」
ゆっくりと話しながら、黒子くんの前まで歩み寄る黄瀬涼太くん。
体育館内の空気がピリッと張り詰めるのが伝わってくる。
「うちにおいでよ。また一緒にバスケやろ?マジな話、黒子っちのことは尊敬してるんスよ。こんなところじゃ宝の持ち腐れだって。ね?どうっスか?」
たしかに彼の言う通りかもしれない。
けれど、誠凛のことを、リコ先輩たちが1年かけて作り上げてきたものを、“こんなところ”なんて言うのは許せない。
自分の拳に力が加わるのが分かった。
黒子くん……なんて答えるんだろう……?
「そんな風に言ってもらえるのは光栄です。
丁重にお断りさせていただきます」
「文脈おかしくねぇ!?……そもそもらしくねぇっスよ!勝つことが全てだったじゃん!なんでもっと強いとこ行かないんスか!?」
丁重にお断りした黒子くんに、ありえないといった様子で声をあげた黄瀬涼太くん。
本当に……勝つことが全てだと思ってるんだ…………。
「あのときから考えが変わったんです」
「え……?」
「……何より火神くんと約束しました。キミたちを……
キセキの世代を倒すと」
きっぱりと言い切った黒子くんに、私は息を呑んだ。
「やっぱらしくねぇっスよ。そんな冗談言うなんて」
吐き捨てるように黄瀬涼太くんが言うと、
火神の低い笑い声が聞こえてきた。