第4章 本入部
「今いる2年は全員去年やったのよ?」
腕を組んで言ったリコ先輩。
「はぁ?聞いてねぇ……」
隣に立っていた降旗くんが小さく言った。
「いや、勧誘のとき言ってた……」
「けど、まさかここまで……」
福田くんが思い出したように言うと、河原くんがつづける。
この3人仲良しなのかなー……なんて冷静に考えつつも
わたしの頭の中はかなりパニックだ。
ただでさえ目立つの苦手なのにこれは……。
なにを言ったものかと周りを見回す。
「さっきも言ったけど、具体的で相当な高さのハードルでね?“一回戦突破”とか“頑張る”とかはやり直し!」
焦っているところに追い討ちをかけるリコ先輩。
誰が一番に言うか伺おうとしていると、
それよりも先に火神が動いた。
「よゆーじゃねぇか。……テストにもなんねぇ」
そう言ってつかつかと歩いていき、柵の上に飛びのった火神。
リコ先輩が目を見開く。
さすがに危ないと声をかけようと口を開いたと同時に
大きく息を吸う音が聞こえた。
「1-B 5番!火神大我!キセキの世代を倒して、日本一になる!」
火神の真っ直ぐな声が響いた。
校庭でざわめく声。
隣で降旗くんが息をのむ音。
そんなものより、私の心臓の音が大きく聞こえる。
なんだ、これ。
「次は?」
言い切った火神くんが柵から降りて、
リコ先輩がこちらを向いた。
「あの、私!私 言いたいですっ!」
気がついたらそう言っていて、自分でも驚いている。
興奮気味に行った私に、リコ先輩は笑顔で頷いてくれた。
緊張してるけど、嫌な緊張じゃない。
すぐに柵へ駆け寄り、めいっぱい息を吸った。
「1-B 、新沢 奏!バスケ部のみなさんの大きな目標が達成できるように、全力でサポートします!」
暑い顔を冷ますように、ゆっくり息を吐く。
勢いで言っちゃったけど、ちょっと冷静に考えると全然具体的じゃない……でも、マネージャーの私にできることはこれくらいだから……!
ひと息おいて振り返ったとき、
一瞬だけど、火神と目が合った気がした。