第3章 部活に入ろう
先ほどの黒子くんの言葉を思い出して、黒子くんを探した。
はっと息をのむ。
気がつくと黒子くんはノーマークで、ボールがパスされたと思えば、ほかの人へ既に渡っていて……、
魔法みたいだ……。
「打て!シュート!」
火神くんの声で現実に引き戻される。
「ミスディレクション…………」
隣でリコ先輩が小さく呟いた。
言葉の意味が分からなくて、
コート内へ視線を向けたまま口を開く。
「黒子くんは……パスの中継役になっている…んですよね……?でも、どうしてあんなに……」
私の聞きたいことが分かったようで、
リコ先輩が少し早口で話し始める。
「ボールに触っている時間が極端に短いのは分かる……?」
次々とパスを回す黒子くんから目が離せないまま頷く。
「元々の影の薄さをもっと薄くした……というより、自分以外に相手の意識を誘導している、自分以外を見るように仕向けているのよ。これをミスディレクションって言うの。手品とかでもよく使われる手法よ。」
リコ先輩の説明を聞く間にも点差は埋まってついに一点差。
白熱した空気に背筋が伸びる。
2年生チームのパスをカットして、黒子くんにボールが渡った。
「行けぇ黒子ぉぉ!!」
「黒子くんっ!」
みんなの視線が集まるなか、黒子くんがボールを放つ。
……………………が、見事にリングに当たり、外れた。
「「あぁ…………」」
誰もが1年生チームの負けだと思ったその瞬間、
外れたボールは再びゴールへと叩き込まれた。
「だから弱い奴は嫌いなんだよ!ちゃんと決めろ、タコ」
ミニゲームは1年生チームの勝利。
やりきった表情の火神くんと黒子くんが視線を合わせていた。
他の1年生もハイタッチを交わしている。
やっぱりいいな、こういうの。
私も自然と笑顔になっていたようで
リコ先輩に生意気だとほっぺを引っ張られた。