第3章 部活に入ろう
「なんかもめてんぞ……」
小金井先輩が呆れたように言う。
「ん……?」
眉をひそめた伊月先輩。
「どうした?」
「あいつ……試合出てたか?」
小金井先輩が聞き返すと、
伊月先輩の視線は黒子くんへ向けられた。
「黒子か……いや、分かんねぇ」
首をひねる小金井先輩。
よくよく考えると、私もわからない。
整列のときはいた気がする……ようなしないような……。
いや、さっきミスしてるところは見た気が……。
そこからなんとかリコ先輩たちが収めてくれて、ゲーム再開。
「すいません、適当にパスもらえませんか」
「は?」
ぽつりと言い放った黒子くんに、
よく分からないといった表情の福田くん。
けれど、黒子くんの表情はいたって真剣で
今度こそ目を離さないように集中しなおす。
「あと3分です!!」
みんな疲れが出てくるところ、
ここでしっかり声を出さなきゃ。
再びコート内へ視線をもどしたときだった。
「え…………っ?」
「今、どうやってパス通った……?」
先輩方の気の抜けた声。
私も唾を飲み込む。
見ていた。ちゃんとボールを追っていたはずだ。
それなのに、気づいたらボールは福田くんからゴール下の降旗くんへと渡っていて、簡単にシュートが入っていた。
体育館の空気が変わる。
ざわめき、緊張感が走る。
その後は完全に1年生の流れだった。
気がついたらパスが通っていて、ゴールがきまっている。
ぞくぞくして、自然とにやけるこの感じ。
メモを取ることなんてどうでもいい。
あと2分をしっかりこの目で見ておきたい。