第3章 部活に入ろう
ー 4月13日(月) ー
1年生は土日の練習がまだないから、2日ぶりの練習。
金曜日の火神くんと黒子くんのことが気になるけど
今は練習に集中しなきゃ。
「5対5のミニゲームやるわよ! 1年対2年で!」
アップが終えた部員を集合させると、
リコ先輩が、それはそれは楽しそうに言い放った。
1年生がざわつく。
「先輩といきなり………!?」
河原くんが目を見開いて言った。
「覚えてるか?入部説明のとき言ってた去年の成績……
確か1年だけで決勝リーグまで行ってるって……」
福田くんがぽつりと呟く。
そうそう、私が体育館に行くために後をつけていたのは
福田くんだったみたい。
「まじで!?普通じゃねぇぞそれ……」
二人の言葉に降旗くんも焦っている。
内緒だけど(もうばらしてるけど)降旗くんは好きな人がいるらしい。その人のためにバスケを頑張っているんだって。
「ビビるとこじゃねぇ。相手は弱いより強い方が良いに決まってんだろ。行くぞ!」
やる気満々の火神くん。
ほんとにバスケが好きなんだな……。
頼もしい同級生の後ろ姿を、眩しい気持ちで見つめた。
ちらりと隣を見ると、リコ先輩が不敵に笑っていた。
すっごく楽しそうだ。……いろんな意味で。
私は苦笑いしながら、メモを取る準備をはじめた。
もちろんドリンクやタオルを用意するマネージャーの仕事もあるけれど、メモを取ることは、中学3年間で見つけた、私がチームのためにできる、数少ない仕事だ。
リコ先輩みたいな特技があるわけでもないし、
バスケについて詳しい知識だってない。
ルールやポジションなどは少し分かるけれど、技術面は全然だ。
そんな私でも、力になれたらいいと思ってはじめた。
体調とか、試合後の様子とか、
どの位置からのシュートが入りやすいとか。
ひとりひとりをしっかり観察すること。
……きっと、誰でもできることだと思う。
だけど、悔しいけれど、私にできることはこれくらいだ。
だから、私にできることぐらい全力でやりたい。
ほんの少しでも力になりたい。
考えながら手を動かしていると、ホイッスルの音がした。
バインダーとシャーペンを手に取り、コートに振り返る。