第7章 VS お父さん
「ん……?ダメですヨ、幼稚園セイがコッチに来ちゃ」
「え………………」
どこかできいたことのある声だと思い頭を上げると……というか、もうすっごい上を向くと、あの留学生……お父さんがいた。
鼻が痛いのとびっくりしたので声が出ない。
「ほら、観客セキはアッチのほうデス」
「い、いや、その、わわわ私、ベンチに行きたくて……」
お父さんを見上げたまま説明するけれど、かなりどもってしまった。
もともと目つきの悪い彼に見下ろされるなんて、これはもうヤのつくお仕事の人と対峙してるくらいの恐怖だ。
じっとこちらをガン見するお父さん。
びくびくしながら見上げていると、
彼は唐突にぽんと手をたたいて私を担ぎあげた。
そう、担ぎあげた。
米俵みたいに。
担ぎあげたのです。
………………………………。
「えぇぇぇ!!?ちょ、お父さ……じゃなくてえっと、パパガンバルン……じゃなくて、えーっと、あぁもう留学生さん!!降ろしてくださいぃぃ!!」
ジタバタと暴れてみるけど時すでに遅し。
私のことなんか気にせずに鼻歌まで歌い出した。
「うるさいデスヨ。今センパイのとこ連れて行ってアゲルからネ。
……センパイの妹サン連れていけば遅レタことゴマカせるし」
聞こえてる!
今小声で言ったの聞こえてるよ!!
しかも私は妹じゃなくて誠凛のマネージャーです!!
……なんてことはこんな状態で言える訳がなくて、もうこのまま体育館まで運んでもらえるならラッキーだと開き直って、周りの視線から逃げるように顔を伏せた。