第5章 モデルさんと海常高校
抜群の勝負強さを持つクラッチシューターの日向先輩
広い視野で状況を把握して俊敏にパスを回す伊月先輩
堅実に仕事をきっちりこなす縁の下の力持ちの水戸部先輩
なんでもそつなくこなすオールラウンダーの小金井先輩
日向先輩のシュート力を活かしたチームオフェンス。
火神も必死で涼太を止めにかかっている。
誠凛は、誰一人として諦めていない。
第四クォーター、開始1分。
74対68で、点差は6点。
黒子くんが抜けた穴は大きく、先輩方の表情も厳しそうだ。
「監督!なにか手はないんですか……っ!?」
「前半のハイペースで、策とか仕掛けるような体力残ってないのよ!……せめて黒子くんがいてくれたら…………」
福田くんとリコ先輩の会話を聞きながら
黒子くんの包帯を巻きなおす。
切った位置が額だったから血は沢山出たけれど、
傷自体はそこまで深くはなさそうだ。
脳とかに異常がないといいけど…………。
「え……っ?」
僅かに黒子くんの手が動いた。
「分かりました……」
そう言って上体を起こそうとする彼の背中を慌てて支える。
「黒子くん!?ダメだよ!怪我が……っ」
そのまま試合に出ようとするのを必死で止めるけれど、
“大丈夫です”なんて言って笑顔を見せられたら、
引き止める力が抜けてしまった。
「おはようございます。……じゃ、行ってきます」
呆然とするリコ先輩や降旗くんたちにそう告げると
ふらふらとした足取りのままコートへ向かおうとする黒子くん。
「ちょっと!?いやいやいや……なに言ってんの!?」
「でも今いけって……監督が…………」
「言ってない!たらればが漏れただけ!」
「じゃあ出ます」
「おいっ!」
リコ先輩と黒子くんのやりとりを見ながら、
ふう、と息を吐く。
黒子くんが戻ってきたとき、
すぐに病院にいける手配をしとかないと……。