第11章 走る
バンッ!
ん? 屋上のドアが開く音…。
逢坂くん。
「サキ!」
大声で私の名前を叫ぶ。
ものすごい勢いで駆け寄ってくる。
えっ?
「バカ! 早まるな! 死んじゃダメだっ!」
ぎゅっ…
思い切り抱きしめられた。
えっ……?
私バカだけど、この高さじゃ死に切れないってわかるよ…。
周りを気にしないカップル達も、さすがに私たちに注目してる。
逢坂くんは私を抱きしめたまま、説教を続ける。
「君はいつもそうだ! 自分の気持ちを隠して…無理して…でも結局我慢出来なくて…最悪の選択をして周りに迷惑をかける!
君が死んだりしたら…君の大好きなお父さんと僕に死ぬほど迷惑がかかるんだぞ。
そんな選択をする前にお父さんに寂しいって言えよ。
私だけを好きでいてって僕に言えよ!」
……。
走ってきたのかな…。
彼の身体は熱い。
息もはぁはぁしてる。
屋上の少し冷たい風に吹かれた私の身体は、急激に温められる。
うん…逢坂くん…。
私ちゃんと言うね。
でも今は泣いててしゃべれないから…
後でちゃんと言うね。