第2章 覚める
「まったく意味がわからない…。どうしてこんなこと? せめて理由を教えてくれないだろうか」
落ち着いたフリで彼が尋ねる。
私はベッドに背中を向けて座り込む。膝を抱えて。
「好きだから…」
「は?」
「逢坂くんのことが好きだから」
「いや、全然意味がわからない」
私は彼のほうに向き直し、彼の顔を見つめる。
「私、逢坂くんのことが好きなの」
「…知らなかった」
「ずっと好きだったの」
「君のような素敵な女の子が僕のことを好きだなんて…光栄だよ」
「ふふ、取って付けたようなお世辞」
「いや、本当に」
「じゃあ、付き合ってくれる?」
「こんな状況で言われても…ね」
彼が小さくため息をつく。
「こんな状況じゃなくても断るでしょ?」
「……」
「逢坂くんは茜ちゃんのことが好きだもんね」
「そう…だよ。君はそれを知っていたじゃないか。なのに…なぜ…」
彼が不思議そうに私の顔を見つめる。
「知っていても…!」
一瞬、感情が高ぶり、声が震える。
落ち着くために一回呼吸をする。
「知っていても止めることが出来なかった…」
私のそんな様子を彼はじっと見つめている。
そして口を開く。
「わかるよ」
私も改めて彼の顔を見る。
目があったことを確認して、彼が話し始める。
「恋をする気持ちというのは、止めようと思って止められるものではない。それはわかる。だけど…」
彼の話が一瞬止まる。
きっと言葉を選んでいるのだろう。
「どうしてこんなバカなことを?」
クスッ
選んでそれ?
私はちょっと笑っちゃう。