第10章 甘える
帰り道を逢坂くんと歩く。
「保健室だと不思議とよく眠れたよ。私、明日から毎日保健室で寝ようかな」
「ダメだよ。あんなうさんくさいヤツがいる保健室にたびたび行くなんて。まったくどうしてうちの学校の保健室の先生は男なんだろうね…」
彼が嘆く。
「そういえば逢坂くん、今日部活は?」
「休んだよ」
「ごめんね…。私のために」
「いいんだよ。もう少し甘えたほうがいいって言ったろ」
「ありがとう…。今日ね、茜ちゃんが私を保健室まで連れて行ってくれたんだよ」
「うん。聞いたよ」
「茜ちゃんっていい子だね」
「そうだね」
「逢坂くんが茜ちゃんのこと好きになるのわかる気がする」
「……」
しばらく黙ったまま私たちは歩く。
沈黙に耐え切れなくなって、私は口を開く。
「でも私…逢坂くんのこと好きなの」
「知ってるよ」
彼は答える。
「私…2番目でいいから…逢坂くんに好きになってもらいたい」
「……」
逢坂くんは立ち止まり、私の顔を見る。
「それは…君の本当の気持ち?」
「うん…」
私は頷く。
「好きだよ。君のこと」
彼は少し微笑む。
「本当?」
私は思わず聞き返す。
「うん」
彼は頷く。
「うれしい…」
涙がこみあげてくる。
「帰ろう」
彼が背中を優しくポンポンと叩く。
「うん」
私は彼の顔を見上げて微笑む。