第9章 来る
「じゃあね、サキちゃん、茜ちゃん」
逢坂くんとA組の教室の前で別れる。
「ねぇ、サキちゃん」
教室に入ると、茜ちゃんが楽しそうにコソコソ話す。
「サキちゃんと逢坂くんって仲良いね。もしかして付き合ってるの?」
ヤバッ…
「ち、違うよ! 全然! 話は割とあうけど…私、ああいうジトッとした人より、もっとパァッと明るい人が好きだもん。茜ちゃん、私の中学の時の彼氏知ってるでしょ? 全然違うでしょ!?」
「そ、そんな必死に否定しなくても…」
早口でまくしたてた私の様子に、茜ちゃんがちょっとひいてる。
あっ…かえって怪しかったかな…
もっと具体的に…
「私が最近気になる人はねぇ…」
私は教室を見渡す。
「如月くん」
思わず如月くんの名前を出す。
目についた中で一番逢坂くんと正反対っぽかった。
「えっ? 斗真?」
茜ちゃんがビックリして、少し高い声を出す。
「シッ! 内緒!」
私は唇の前に人差し指を立てて、茜ちゃんを制する。
「あっ、ごめん。ビックリしちゃって。だってサキちゃん、今までそんなこと全然…」
そうだよね。私もビックリする。
「ね、そうだ! じゃあ…みんなで遊びに行かない?」
茜ちゃんが弾んだ声を出す。
「みんな?」
私は首を傾げる。
「斗真と逢坂くんとサキちゃんと私で…ダブルデート…的な」
「だっ、ダブルデート!?」
「シッ!」
高い声で復唱した私を、今度は茜ちゃんが制する。
「デートとか言うと斗真嫌がるからさぁ、適当に誘ってあげる。だからサキちゃんは逢坂くんに声かけてみて」
「う、うん」
茜ちゃんって普段ぼんやりしてて天然なのに、妙に行動力あるときあるよね…。
でも…
茜ちゃんを交えたダブルデートなんて…!
逢坂くん喜ぶだろうな!
褒めてもらえるかな…ふふ。
私はウキウキする。