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境界の先

第8章 撮る


「今日は泊まっていけないんだけど…大丈夫?」

部屋に戻ったとき、彼が私に尋ねる。

「うん、大丈夫。昨日は泊まってくれてすごくうれしかった。ありがとう」

私はお礼を言う。

「そんなにうれしいのなら、普通に誘ってくれたらよかったのに」

彼が笑う。

「だって…そんなの…悪いし…」

恥ずかしくなって私はうつむく。

「睡眠薬盛って縛るほうが悪いだろ」

あきれた様子で彼が言う。

「ごめんなさい…」

「そういえば…睡眠薬。まだあるんだろ? 僕が預かるよ。出して」

彼が手を出す。

「えっ…と…。もうないよ。全部使っちゃった」

「本当に? また僕を騙したら、もっと酷い目にあわせるよ?」

彼が私の顔を覗き込む。

「ごめんなさい…」

私は残りの睡眠薬を出す。



「こんなに…! こんなに手に入れてどうするつもりだったんだ!
服薬自殺をするつもりだったのか?
僕は親切だから教えてやる。服薬自殺で死ぬことはとても難しい。
根性の足りない君には絶対に無理だ。泣きながら、それこそ死んだほうがマシだって思いながら、胃洗浄されるのが関の山だ」

薬のシートの束を見た彼に説教される。

「これで死のうと思ってたわけじゃないよ…。私、夜眠れなくて…。これがたくさんあると安心だから…」

私は説明する。

「下手な言い訳だな。寝てただろ。ぐーぐー寝てただろ? 僕の隣で」

彼が責める。私を。

「家に誰もいない夜…上手く眠れなくて…」

打ち明ける。

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