第8章 撮る
彼と一緒にホットケーキを食べる。
「美味しい」
一口食べて、彼が感想を言ってくれる。
超うれしい!
「以前茜ちゃんとね、水泳部のなんとかって先輩がわざわざホットケーキを食べに出掛けていたよ。
割と美味しかったけど、それより美味しいよ」
彼がニッコリ笑う。
水泳部の…瀬名先輩かな?
茜ちゃんと先輩が出掛けるの…どんな気持ちで逢坂くん見てたのかな…。
私は胸が痛む。
「それって瀬名先輩でしょ? 先輩は誰に対してもフレンドリーでアクティブだから、きっとノリで出掛けたりするんだよ」
フォローしてみる。
…しばらく沈黙。
「もしかして君、僕を励ましてくれたのか?」
彼が口を開く。
「あっ、うん…」
私は頷く。
「余計なお世話だよ」
不機嫌そうに彼が言う。
そっか…。
せっかくいい朝だったのに余計なこと言っちゃったな。
私はちょっと落ち込む。
「サキちゃん、料理が上手なんだね。昨日のカレーもとても美味しかった」
元のテンションで彼が言ってくれる。
「うん! 家に母がいないから料理が出来ないとか思われたくなくて、本を読んで練習したの」
「偉いね」
小さい子を褒めるみたいに彼は優しく微笑む。心地いい。
「でも、このホットケーキだけは母に教えてもらったんだよ。小学生のときにね」
「へぇ。美味しいわけだね」
「……」
逢坂くん…聞かないでいてくれるけど…気になるよね…。
「小6のときに両親が離婚したの。母には今は別の家庭がある」
「そっか」
「……」
「サキちゃん、何か話したいことがあるの?」
彼が問いかける。
「えっ…? そう見えるの?」
そんなつもりなかったけど…そうなのかな…。
「別にそれで終わりだけどね。よくある話だよね」
私は少し笑う。
「そっか」
彼は頷く。