第7章 食べる
ファミレスを出て駅前に向かう。
手は繋いだまま。
「あの…逢坂くん。駅が近いから、もしかしたら学校の人に会うかもしれない。手を離したほうが…」
私は彼の様子を伺ってみる。
「どうして? 今さら手を握るぐらいで照れるような関係じゃないだろ?」
彼がからかうように言う。
「そっ、そうだけど…。茜ちゃんにもこの辺りで会ったことあるし…」
「ふぅん」
彼が私の手を離す。
……。
やっぱり茜ちゃんには見られたくないよね…。
「ちゃんとついておいで」
「あっごめん」
彼と距離があいちゃったので、ちょっと小走りで近寄る。
イテテ…足の真ん中が痛い…。
…
駅の反対側にある量販店に入る。
上の階の奥まった所、ちょっといかがわしいコーナーに向かう。
恥ずかしい…。
本当、誰かに見られたらどうしよう…。
でもまあ、学校の人こんな所来ないか。
逢坂くんはコスプレの衣装を物色する。
「これかな…君に似合いそうなのは」
1着取り出して、彼はそれを私の身体にあてる。
…メイド服。
「うん、いいな。サイズ大丈夫だよね?」
彼が私に尋ねる。
「えっと…」
私はサイズ表記のタグを読む。
「大丈夫だけど…よく見たらこれ…胸のとこ、すっごく開いているんだけど…開きすぎじゃ…?」
「バカだな。だから似合うんだよ」
彼がクスッと笑う。
えー…。
「後、これも一応。ふふっ」
…セーラー服。
「制服なんてわざわざ買わなくても…。学校のがあるのに」
「学校のはこれじゃないだろ」
唇をとがらせて、彼が反論する。
逢坂くん、セーラー服好きなの?
「君、ニーハイとかタイツは持ってる?」
「え? 黒なら…持ってる」
「ふむ。セーラー服はそれでいいけど、メイド服はやっぱり白だな。よし、それも買っておこう」
彼がうれしそうにつぶやく。