• テキストサイズ

境界の先

第1章 越える


グラスにジュースをいれて、部屋に戻る。

「どうぞ」

睡眠薬入りのほうを、彼に差し出す。

「ありがとう」

何の疑いもなく、彼は一口飲む。

「ほら、茜ちゃんだね。可愛いなぁ」

私に語りかけるその声は興奮している。

もちろん薬の味がわからないようには作ったけど、この様子だと何も気付かれないですみそうだ。

「君は何組だったの?」

彼が顔を上げて尋ねる。

「えっ?」

「柏原さんは? 何組?」

「あ…えっと、B組」

「どれどれ」

彼がアルバムのページをめくる。

……。

逢坂くんが私に興味を持ってくれるなんて…。

たとえほんの少しでも。ついででも。嬉しい。

「あぁ、この子だね。ふふ…そんなに変わらないね? うーん、でも少し幼いのかな」

彼が目の前の私と、アルバムの私を見比べる。

自分の顔が熱くなるのを感じる。

しばらく眺めた後、A組にページを戻す。

「ねぇ、写メ撮っちゃっていいかな」

ポケットからスマホを取り出して、彼が私の様子を伺う。

「いいんじゃない? 内緒だよ」

私は唇の前で人差し指を立てて答える。

「やった」

彼ははしゃいだ様子で、アルバムの中の茜ちゃんにカメラを向ける。

/ 98ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp