第1章 越える
1時間程前…
金曜の放課後。
「どうぞ、逢坂くん」
「お邪魔します…。わぁ、綺麗にしているね」
「ふふ、そんな取って付けたようなお世辞いらないよ」
「いや、本当に」
私は逢坂くんを部屋に招き入れた。
…
逢坂くんの好きな女の子。茜ちゃん。
私はその茜ちゃんと同じ中学出身。
卒業アルバムを見せてあげる、って言って彼を連れてきた。
…
「そこに座って。はい、これ。中学の卒業アルバム。好きに見てて。えっと…茜ちゃんは…」
「A組…だよね?」
「そうそう、A組。私、飲み物持って来るね」
「あ、お構いなく」
「ふふ、私が飲みたいの。待ってて」
「ありがとう」
彼はニッコリと微笑んだ。
逢坂くんが私の部屋に座り、私に微笑みをくれた。
私の胸は熱くなった。
それだけで充分な気もした。
でも…
やっぱり自分を止められない。
私は欲深いの。