第4章 眠る
「死ぬ理由…やっぱり話せないか?」
飲み物を飲んで一息ついたらしい彼が、私に語りかける。
「ん…別に死ぬ理由なんてないよ」
私は答える。
「理由がないなら死ななくてもいいだろ」
「生きてる理由もないし」
「ふぅん」
「納得した?」
「いや、してない。この事…僕にこういう事した事…誰にも言ったりしないから…死ぬなよ」
少し真面目な顔で彼が言う。
「別に生きててもいい事ないし」
少し笑って私は答える。
「わからないだろ。この先、いい事があるかもしれない」
「ないよ。逢坂くん、私にお説教するの?」
「別に説教するつもりはない。友達からのアドバイスだ」
「そう…。ありがと」
「説教されたいのか?」
「へっ? なんで?」
「そんな顔してた」
「してないよ」
私は顔をそらす。
「君のように可愛くてスタイルのいい女の子なんて、人生楽勝じゃないのか? 僕もそんなふうに生まれたかったけどな」
冗談を言う口調で、彼が言う。
腹立たしい。
「そんないいもんでもないよ。
よく知らない人に変な目で見られたり、好きでもない男の子にしつこく言い寄られたり、女の子にはよくわかんない陰口ひろめられたり…
嫌なことばっかり」
私は吐き捨てる。
「そんなの僕に言えば、なんとかしてやるのに」
彼が得意気に言う。
どうするっていうのよ。
「逢坂くんは自分のことで忙しいでしょ。茜ちゃんのこと追っかけたりさ」
「サキちゃん…。君、もう少し他人に頼ることを覚えたほうがいいよ」
「ありがとう。来世の参考にするね」
私はニッコリ笑ってお礼を言う。