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境界の先

第4章 眠る


逢坂くんは再びウトウトしている。

まだ薬が抜けきっていないんだろう。

私はお気に入りの本を読みながら、ときどき彼の寝顔を見たりして過ごす。

癒やされる。

最後の夜にふさわしい。

手に持った本の下にある自分の脚が、ふと目に入る。

私は下を向いて自分の身体をなんとなく見る。

逢坂くんがこの身体をほめてくれた…。



「うーん…サキちゃん…」

ん? 逢坂くんの声。

また目が覚めたのかな?

ベッドに近寄り、彼の顔をのぞく。

「喉渇いた…」

私の顔を見て、彼が言う。

「あぁ、ちょっと待ってて。何か持ってくる」

私はキッチンの冷蔵庫からスポーツドリンクのペットボトルを出す。
それと長めのストローを持って部屋に戻る。

寝ている彼の目の前で、ペットボトルの封を開ける。
それにストローを差して彼の口もとに運ぶ。

「はい、どうぞ」

「…何か入ってない?」

彼が苦笑いする。

「入ってないよ。開けるの見てたでしょ?」

「飲んでみて? 一応」

「はいはい」

私はストローでひとくち飲む。

彼がそれをじっと見る。

「ね、大丈夫でしょ?」

「うん、ありがとう。ちょうだい」

「あっ、ストロー替えようか?」

「いいよ、そのままで。むしろそのままがいいな」

彼がニッコリと笑う。

「…どうぞ」

差し出したストローを彼が吸う。

私はその様を眺める。

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