第3章 話す
「自覚がないのか? クラスのよく知らないようなヤツに君を紹介してくれとか頼まれるよ。絶対にしないけど」
「どうせチャラチャラしたバカでしょ?」
「ふ…チャラチャラしたバカ…。そうかもしれない」
彼は楽しそうに笑う。
「中学のとき…の一応元彼氏…もそうだった。私、ファーストキスだってちゃんと言ったのに、いきなり舌入れられたの」
「ぶっ」
彼が吹き出す。
「他人事だと思って…。だから私、キスなんてどうでもいいの!」
思わず、私の声が大きくなる。
彼はふっと微笑む。
「ごめんね。嫌な思い出だったのかい? 僕には微笑ましい青春の1ページに思えたよ。なんだかうらやましいな」
「そんないいものじゃないよ…。
だいたい私のこと好きなんて言ってくる男の子なんて、みんなそんなヤツばっかり。
逢坂くんみたいな真面目な男の子は私のこと好きじゃないし…」
私はため息をつく。
「それは…チャラチャラしたバカでひとくくりにされる男に気の毒だし、僕のことを買いかぶり過ぎてもいる。
僕だって…そんなたいした男でもないよ」
納得出来ない。
私は首を傾げる。
「僕とキスしたい?」
「えっ」
彼の言葉に、私はパッと前を見る。
「それとも寝ている僕に何か悪戯済み?」
彼がクスッと笑う。
私は自分の顔が熱くなるのを感じる。
動揺がこれ以上出ないように気をつけて返事する。
「頬に少し触れただけ。唇は茜ちゃんとのために取っておいてあげたよ」
「親切なんだね。君は」
彼が優しく微笑む。