第3章 話す
再び沈黙…。
彼が先に口を開く。
「僕はキスしたい。サキちゃんと」
「…私は茜ちゃんじゃないよ」
「わかってるよ。でも君のような素敵な女の子とキスできるチャンスがあるのなら、是非してみたい」
「…別に素敵じゃないし」
「君は本当に自分の価値をわかってないんだな。顔は可愛いし、スタイルもいい。たいていの男は君とキスしたいだろう。できたら舌を入れて」
「ふふっ…」
私はちょっと笑う。
「逢坂くんもそんなことに価値を見いだすんだ」
「まあね。それに君はそれだけじゃない。頭が良くて、話が面白い。優しくて親切だ。
少々エキセントリックな一面があったことを、今日初めて知ったわけだけども…そのギャップが君を、より魅力的に見せてくれる気もする」
「あはは…」
「だから…この拘束を解いて。朝までまだまだ時間はあるよ。僕と楽しもう?」
「ふっ…私をおだてて誘惑して、逃げ出す算段か…。残念ながらそういう誘いを断るのは慣れてるの。さすがに逢坂くんに誘われて、心が動かないことはないけどね」
私はニッコリ笑って、彼に背を向ける。