第3章 話す
「サキちゃん」
ほんの少しウトウトしてたらしい。
彼の声で覚醒する。
私は顔を上げて、ゆっくり彼のほうを向く。
「逢坂くん、私の名前知ってたんだ」
「知ってるよ」
覚めたばかりのぼんやりした頭で彼の顔を眺める。
かっこいい…ふふ…。
「朝まで一緒にいたいって君の気持ちはわかったよ。今夜は君に付き合う。僕は逃げ出したりしないから、この拘束を解いてくれないか?」
彼が私にお願いする。
気持ちいい。
「嫌だ」
私は答える。
「どうして? 僕が信用出来ないのか?」
「別にそういうわけじゃない。単に逢坂くんの自由を私のものにしていたいだけ」
「ふぅん」
納得したように彼は頷く。
そして話を続ける。
「それでさ、君はどうしたいの? 縛った僕を一晩ベッドに転がしたいだけ? 君がそれがいいなら仕方ないけど…僕は退屈だ。何か話でもしないか?」
「うん、いいね」
私は頷く。