第3章 話す
「ストーカー? 何のことだ。僕がストーカー行為をしているって言いたいのか? 僕はストーカーなんかじゃない」
「自覚がないんだね。盗聴したり隠し撮りしたり、予定をすべて把握しようとしたり、そういうのストーカーって言うんだよ。このスマホの中に証拠がたくさん入ってるだろうね」
「見守ってるだけだよ」
「ふふっ」
「ていうか…」
「うん?」
「君も手伝ってくれたじゃないか。彼女の様子を逐一教えてくれたり、予定を探ってくれたり…」
私はフッと笑う。
「逢坂くんの役に立ちたかった。逢坂くんの嬉しそうな顔が見たかった。逢坂くんに『ありがとう』って言われたかった…」
「その…ありがとう…」
少し気まずそうに、彼がお礼を言う。
「どういたしまして」
私は返事をする。
そしてベッドにもたれて、膝を抱えて座る。
……。
沈黙。
沈黙も心地いい。
彼と一緒だから。
朝までまだ時間あるし。
私は自分の膝に頭を乗せて、彼の息遣いに耳を澄ます。