• テキストサイズ

境界の先

第3章 話す


「僕は楽しくない。こんな格好じゃ」

彼が身体をモゾモゾ動かす。

「明日の朝にはちゃんと解放してあげる。我慢して」

「お家の人は帰ってこないのかい?」

「うちには母はいない。父は海外出張中」

「いつ帰ってくるの?」

「来月」

「こんな危ない娘を一人残して一ヶ月も海外か…」

「私は優等生だからね。信頼されてるの」

「確かに…そう見えたな。今でも信じられないよ。君がこんなことをするなんて…ね」

「ふふふっ」

楽しくなって、私は笑っちゃう。

「あ、そういえば、逢坂くん家はどう? 高校生の男の子が一晩帰らないぐらいなら、警察に連絡とかされないよね?」

「どうかな…」

彼が不機嫌そうに目をそらす。

「一応、友達の家に泊まるってメールしておこうか」

私は逢坂くんのズボンのポケットを探り、スマホを取り出す。

「おい、やめろ。勝手に…」

彼が抗議する。
私はため息をつく。

「パスワードかけてるんだ…。教えて?」

「一晩帰らないぐらいで通報されたりしないから! スマホをいじるのはやめてくれ!」

焦った様子で彼が訴える。

ふふっ

私はますます楽しくなる。

「そんなに見られたくないの? 何か見られたら困るようなものがこの中には入っているのかなぁ…」

私はスマホをヒラヒラ掲げて、彼に見せびらかす。

「スマホなんてだいたい見られたくないだろ」

彼はまた、冷静な口調に戻る。

「パスワードって…どうせ茜ちゃんの誕生日とかでしょ?」

私は彼の目を見る。
彼もまっすぐ私の目を見る。

きっと目の動きで正解を読まれないようにしているんだと思う。

「まあいいや。私、知ってるから」

私は彼のスマホを机に置く。

「知ってるって何を…?」

彼が質問する。

「逢坂くんが茜ちゃんのこと、コソコソ隠し撮りしたり、盗聴したり、ストーカー行為してるってこと」

/ 98ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp