第37章 第二部 プロローグ/プログラム起動
照射された眼鏡の奥の瞳が、眩しそうに細められる。
「な……なんだ君かぁ! 侵入者かスパイかゴーストかと思ったんだぞ!」
「ごめんごめん」
苦笑まじりなマシューに諌められる。
彼はこの研究所に対して、アルフレッドの次くらいに権限を持つ人物だ。
ほっと安心すると同時に、薄青い光源のディスプレイを見る。
ざっと20をこえたディスプレイには、数字や文字が流れていた。
なにかの処理中だろうか。
「君も忘れ物かい?」
「まぁ、そんなところだよ」
「これなにしてるんだい? 仕事は明日にして、帰ってゲームやるんだぞ!」
「またあのヒーローデスマッチのやつ?」
「またってなんだい! しばらく遊んでなかっただろ? いい気分転換になるさ!」
「もう……アルは本当にヒーローが好きだね」
くすくすとマシューが笑う。
屈託のない笑顔はアルがよく知るもので、異変を忘れるくらいのんびりしたものだった。
そんな彼を見て、自然とほほがゆるむ。
――世界会議中に公子が現れた頃から、ときどきマシューがまったく知らない人物に思えることがあった。
たぶん多忙と疲労のせいだと、目の前の彼を見て思う。
やはり気分転換すべきだ、と決意を新たにしていると、
「兄弟、きみは……ヒーローなんだよね?」
改まったように、マシューがそう尋ねた。