第37章 第二部 プロローグ/プログラム起動
この施設は、アメリカとカナダの政府により異変解決のためにつくられた、極秘施設だ。
出入りは厳しくチェックされているし、忘れものをとりに入れるのはアルフレッドとマシューくらいだ(それでも怒られるが)。
懐中電灯を握るアルフレッドの手に力が入る。
銃は持ちこめないため、身を守るものはなにもない。
ここには国家機密が山ほどある。
もし悪用されでもしたら、どれほどの人々に災厄が降りかかるかわからない。
息をひそめ、静かに近づく。
室内の人物は、こちらに気づいていないようだった。
扉を開けっ放しにしているし、殺気もない。
だが、ここの警備システムをくぐり抜けてきた人物だ。
ゆっくり部屋に近づきながら、頭の中でサイレンがまわりだす。
一瞬のためらいがよぎる。
自分はおとなしくして、外部の助けを呼ぶべきでは?
しかし、ここは“アメリカの研究所”で、彼は“アルフレッド”だった。
だから、彼は部屋の入り口をふさぐように立ち、懐中電灯の光線を侵入者につきつけた。
「誰だっ! ――……って、えぇ!?」
自分のまぬけな声に、
「……やぁ、兄弟」
もっと間の抜けた声が答えた。
そこにいたのは、マシューだった。