第37章 第二部 プロローグ/プログラム起動
唐突な問いだ、とアルフレッドは首をかしげるも、いつも通り自信に満ちた笑みでこたえる。
「もちろん! マシューの一人や二人、Piece of cakeで守れるヒーローさ!」
「……そっか」
まるで、アルフレッドがそう答えるのをわかっていたかのように。
マシューは小さな声であいづちを打って、目を伏せた。
そしてゆっくりと、顔をあげる。
穏やかな瞳が、アルフレッドを真正面から見つめた。
「ならきっと――大丈夫だね」
突然、すべてのディスプレイが真っ青に染め上げられた。
一瞬にして室内はぼんやりと青い光に満たされる。
ディスプレイを背にしたマシューの金髪が、青い逆光を浴びてきらきら光っている。
その微笑は、すでにアルフレッドの知るものではなく、
「……え」
まるで別人のような、マシューでない誰かのものに変容していて、
『All delete?』
「――Yes」
温度のない機械音声に答えるマシューの声が、最後だった。
ジリリリリリリリリリリリリリリ
けたたましいサイレンが鳴り、すべてのディスプレイが真っ赤に変わる。
ドンッ!
「なんだっ!?」
そう遠くない場所から爆発音が聞こえた。
急激な音の洪水に、耳がキンと痛みを訴える。
なにが起きている!?