第39章 錯綜と進む針と
「おかしなこと考えてんじゃねぇだろうな。これは“全員の問題”だ!」
なにかと思えば、スコーンだった。
アーサーにスコーンをぶちこまれていた。
真面目そのものの表情でぐりぐりと押し込まれ、苦しさに奇声がもれる。
「お前一人が頑張ったって効率わりーんだよばか!」
「んごっ、ふごっ」
「っつーか会議だ協力だはお前のお得意だろうが! しっかりしろばかぁっ!!」
「ふがっ、もごっ」
不本意ながら慣れ親しんだ味。
全身にふりかかる罵声。
――ほんの少しだけ、体の緊張がほどけていくような、そんな感覚を覚えた。
それが逆に、無意識にどれだけ気を張っているのかを、アルフレッドに知らせていた。
「会議もあるし、とっ、特別に作ってきてやったんだからな! シャキっとしろよ! 俺は先に行くからな!」
いつものように、怒りまじりに赤い顔でそう言って、アーサーは身を翻す。
その歩みが、ふと止まる。
自分が彼の腕を掴んだせいだと、アルフレッドは遅れて理解した。
どうやら俺は、思っている以上に弱気になっているらしい。
「アル……?」
「おいていかれるのは、もう嫌なんだ」