第2章 どうやら捨てられたようです
ニエは早くここを離れなければ、と小さく右足を前に出そうとした瞬間…
「オイ、餓鬼」
ニ「〜〜っ;」
内蔵に響くような低く、恐ろしい声
皮膚にビリビリくるような空気
直感でわかる。今後ろにいる奴はヤバイ…振り向かずに逃げようか?いや、今逃げればきっと殺られる。
ニエは一度、小さく息を吐いた。そして恐る恐る、振り返るとそこに居たのは人の形をしているものの、猿のように曲がった背、手足が長く、ボサボサの茶色い短髪、獣の毛皮を羽織り、『弔』と書かれた半面をつけていた。
大きく開かれた不気味な口からは獣のような牙がニエを喰わんとばかりにギラリと光っていた。
「ほう…我が見えるか…人の領分にズカズカと…ここをどこだと思っておる。喰うてやろうか、人の子よ」
ニエは心臓が飛び出すんではないか?というぐらいに早くなるのを感じた
ニ「(空気が重い;これが殺気ってやつなのね;…あれは牙なの?獣じゃない…体だって雰囲気だって……妖怪っ;)」
ニエは恐怖に耐えきれなくなり、その場から逃げ出した。伸びきった草を掻き分けて
「ほぉ…我から逃げるか…愚かな」