第2章 出会い
なーんて思いはむなしく、儚い。
及「瑠維ちゃーん!!」
朝のホームルーム終了後、窓際の席である事を恨む。
ひょこっと可愛らしく登場したのは及川先輩。
どうやら、3年生の方が早く終わったらしくて、ずっとスタンバってたっぽい。
『な、なんでしょうか』
及「来てみました」
…威張って言う事か?それ。
及川徹が誉めて欲しそうな顔をしている。
1、無視をする
2、イタイ人を見る目で見つめる
3、誉める
瑠維は3番を選んだ。
『す、すごいですね…』
及「でしょでしょ!!ホームルーム終わってダッシュで来たからね!!」
あ、なんか犬みたい。
飛雄が私のこと、犬って言ってたけど…
こーゆー感じなのかな、飛雄から見た私って。
え、ちょっと落ち込む。
及「じゃあ、チャイムなっちゃうから行くね?」
『いや、もう来なくていいですよ』
及「いやだね、絶対来るから。またね、瑠維ちゃん」
またねって…
また来る気?この先輩…
それから、及川先輩はほぼ毎日毎時間私の教室に通い詰めた。
及川先輩はモテるから、僻みがすごいんだろうなとか心配していたけど、私の今までのイメージによって、許されていた。
王子様というイメージは、案外利用しやすいのかもしれない。
そんなことを思っていると、
8月が終わって
9月が終わって
あっという間に10月も11月も12月も過ぎて行った。
新年を迎えてからも、時間の感覚は早くて
1月2月3月と過ぎて
とうとう、及川先輩が卒業した。
いつもみたいな笑顔で、
「試合見に行くから、岩ちゃんと」
とか冗談言いながら、岩泉先輩に殴られてたっけ。
でも、もう
「好きです」
とも
「付き合って」
とも
言わなくなった及川先輩。
なんでだろうって聞く前に、先輩は行ってしまった。
それから、2年生になって、クラス替えがあった。
でも、先輩が私の教室に来るはずもなく
一人だけ取り残されたような
先輩が消えてしまったような
寂しいという感情が芽生え始めてきた。
そんなある日。
先輩は試合を見に来てくれた。
いつもより調子も良くて、いつもより動いた。
その試合には勝って、皆で喜んだ。
事件が起こったのはその後だった。