第3章 高校生活
試合は接戦の末、青葉城西が勝利を収めた。
終始、及川先輩しか見ていなかった理沙を、強引に試合に引き込むほどの試合だった。
『…変わったね、飛雄』
理「え?」
『いや、なんでもないよ』
「唯我独尊」
そんな言葉が似合っていた中学の時の飛雄はどこに消えたんだろう。
才能はあるのに、コミュニケーションをとるのが苦手で、
いつも空回りして、苦しそうにバレーしながら、それでも勝ちにこだわって、
最後には一人になってしまった
私の大切な幼馴染の飛雄。
やっと、好きなバレーが出来るようになったんだね。
『日向翔陽か…』
理「あの子凄かったね!!びゅんって感じで」
『うん、凄かった』
飛雄を変えてくれたのは、きっとあの人だ。
理「ちょっ!?瑠維!?」
胸のつかえが外れたように、涙が溢れてくる。
よかった、本当に。
苦しそうにバレーする飛雄を、私はもう見なくていい。
切羽詰まったかのように、鬼気迫る勢いで練習していた飛雄はもういない。
飛雄一人だけでしていたバレーはもう終わったんだ。
理「なんで泣くのよ、もー。及川先輩勝ったからいいじゃんか」
及「ほんとだよ、瑠維ちゃーん。俺ら勝ったのになんで泣いちゃうのさ」
理「お、及川先輩!?」
突然降ってきた声に、私も理沙も驚いて顔をあげる。
いつもの営業スマイルで、こちらを見ている先輩。
瑠維ちゃんは任せて
そう言って理沙を追い払う及川先輩。
私、今日理沙と帰るんですけど。
そんな軽口は叩かない。
ただ、無言で、下を向く。
及「…来てくれてありがとね」
『…かっこよかったです』
及「あれ、俺のこと見てたの?瑠維ちゃんは、飛雄の応援に来たんじゃなかった?」
怒ってる。それもそうか。
及川先輩は、私と飛雄の関係を、良く思っていない。
『飛雄、変わりましたね』
及「…そーだねー」
『飛雄、及川先輩たちがいなくなってから、すごく苦しそうだったんです。及川先輩は、飛雄のこと嫌いだと思いますけど』
でも、
『飛雄は、及川先輩の背中を追いかけてるんです。ずっとずっと』
『やっぱり及川先輩はすごいです』