第3章 ハイキュー 烏養繋心
そして、今日 残業で遅くなったが帰ると、繋心は何食わぬ顔でビールを飲み、テレビを見ていた。
「お疲れさんっ
そんな疲れた顔してっとふけっぞ」
来るなんて話は聞いてなかった。
そもそも もう2週間、電話もメールもしていなかった。
嶋田くんや滝ノ上くんから、たまにメールを貰いなんとなくバレー部の状況は分かっていた。
が、繋心本人からではない。
もうダメかも知れない。
はそう思っていた。
引っ越しも10日後に控えていた。
考えていた繋心の家から近いマンション・・・
ではなく、さらに会社に近いマンションに決めた。
部屋数は増えるが 一緒に住むための部屋ではない。
もう荷造りも進めていて、部屋には段ボールが積み重なっている。
繋心には何も伝えていなかった。
何も言わずに引っ越したら怒るだろうか。
もしかしたら、私が引越ししたことなど気付かないのではないか。
このまま自然消滅してしまうのではないか。
そんな不安が頭をよぎり、それを打ち消すように仕事に打ち込んできた。
それが、まさか段ボールに囲まれて何事もなかったようにビールを飲む繋心がいるなんて。
2か月ぶりに見る繋心の姿に張りつめていたものがプツリと切れた。
手にしていたバッグがボトリと落ちる。
家で見直そうと持ち帰った仕事の資料やら何やらが詰まった そのバッグは以前、繋心が買ってくれたものだ。
女の子のものなど分かりそうにもない繋心が、付き合って初めての誕生日に贈ってくれた初めてのプレゼント。
あとから聞けば、滝ノ上と当時 滝ノ上が付き合っていた女子高生と一緒に買いに行ったらしい。
決して高いとは言えないバッグだが、は大事に使い、壊れるたびに修理にだしていた。