第5章 それは、大きな塔だった。
目を覚ますと目に入ってきたのは見知らぬ天井。
起きあがるとその部屋の豪華さがよく分かる。やたらとデカい。
俺「・・・ここは・・。」
「気がついたか。案外早かったのぅ。」
俺「・・・ヤジマさん?・・じゃあここは・・評議院か?」
ヤジマ「いいや、評議院の近くのホテルじゃよ。評議院はジークレインと結託していたウルティアに壊されてしまったからね・・・。」
俺「・・・そうですか。・・あの、ヤジマさん。俺・・・。」
ヤジマ「・・・派遣した軍が海岸で倒れているお前さんを見つけたんじゃ。」
俺「・・・俺の他に・・誰かいませんでしたか・・・?」
ヤジマ「?いいや、報告によるとお前さん以外のフェアリーテイルの人全員と他にミリアーナという女性、ウォーリー、ショウという男は砂浜まで流されていたらしい。他に報告は上がっておらんが・・・。」
俺「そ・・んな・・・。そんなワケない!もう一人いるはずだ!シモンが・・・!」
ヤジマ「・・・残念じゃが、流れ着きそうな海岸は全て調べたんじゃ。・・だが、見つからなかった。」
俺「・・・シモン・・!」
ベッドから飛び出そうとする俺をヤジマさんは許してはくれなかった。
ヤジマ「ダメじゃ。まだ怪我も完治していなければ魔力も回復しておらん。しばらく寝ておれ。」
俺「でも!!」
ヤジマ「・・・ワシは評議院を辞める事にした。」
俺「!」
ヤジマ「もう妖精の尻尾を援護してくれる奴はおらんくなるじゃろう。・・・お前さんがいないと、マー坊に更に負担がかかる。・・分かってくれんか?」
俺「・・・。」
ヤジマ「・・・また様子を見に来る。じゃあ、また後でな。」
ヤジマさんはそう言うと部屋を出て行った。
俺「・・・っ・・。」
誰もいないと頭が理解すると、涙がとめどなく溢れ出てきた。止める事すら、忘れていた。
『一度くらいお前に差し出してもいいだろう?』
俺「うわぁぁぁあああっ・・・」
大きな部屋に、俺の泣き声だけが響いていた・・・。