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短編集「俺はもともと結構しゃべる」

第1章 進撃の巨人 エルド・ジン 「金髪のあなた」


目を合わせないように あなたの胸元に話しかけるように接客をすると、あなたが彼女と選んだのであろう天使の羽のブローチを差し出された。

「これも包装してもらえますか?」
控えめに差し出されたそれを手に取ると 先ほどの余裕の表情とはすこしちがう 心持ち頬を赤らめたあなたが目に入った。
彼女の前では こんな表情もするのか。

この天使の羽シリーズはお店ではあまり人気のある商品ではない。
お店で一番人気なのは愛の形を表したハートをあしらったものであるが、私はこの天使の羽が一番のお気に入りだ。
現に私が普段使っているヘアピンもこのシリーズのものだ。
穢れのない真っ白の羽が こんな私にも幸せを運んできてくれるかもしれない。
少女趣味と笑われるかも知れないが、そう思って作り続けている。

ブローチを小箱に入れ リボンを結ぶ。

先ほど包装を終えた”はたき”と一緒にあなたへ手渡すと、また先ほどの様な余裕の笑みで受け取った。

「ありがとうございました」そう伝えても、あなたは立ち去ろうとしなかった。
一緒にいた彼女はニヤッと笑い、あなたの肘を小突いて
「エルドさんっ 頑張って!」
と小さくガッツポーズをして、帰ってしまった。

何がなんだかよく分からない私はあなたにまた話かけた。
「彼女さん 帰ってしまいましたがよろしいのですか?
せっかく選んだプレゼントを渡さなくて・・・」
もう見ているのは辛いから 早く帰ってほしい。そう思いながら。
でも、本心はきっと違う。
私の勘違いであって欲しい。
そう思っている。

あなたは少し慌てながら

「違うんだ。ペトラはそういうのじゃない。
大切な・・・
大切な仲間なんだ。


あのっ ・・・
くそっ緊張するなんて俺らしくないな。



君のことが好きです。

付き合ってください。」

何が起こったのか理解できないが、先ほど私が包んだばかりのブローチの箱も差し出されていた。

これは現実なのだろうか。
夢でも見ているのはないか。

まさか、あなたも私を思ってくれていたなんて。

ゆっくりと流れ落ちる涙が頬をつたう。
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