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短編集「俺はもともと結構しゃべる」

第1章 進撃の巨人 エルド・ジン 「金髪のあなた」


「やっぱり・・・」とどめを刺された気分だった。
ああいう物を母親に贈る人は多くない。
デザインも私が作っているだけあって 若い人向けの可愛らしい物が多かった。
自分で使いたいと思っているものを作っているのだから しょうがない。

カランコロン

そんなことをしている間にまたお客様がやってきた。
「いらっしゃいま・・・せ」

見覚えのある自由の翼。
あなたと同じ金髪に小柄で可憐な女性。
まぎれもないあなたと同じ調査兵団の兵服だ。

私の視線に気付いたのか、ペコッと頭をさげ あなたのもとへ小走りに駆けて行く女性。

あなたの隣にたつと楽しそうにアクセサリーを見ながら話している。
時折二人の笑い声が聞こえた。

先ほど とどめを刺されたばかりなのに、どうしてこうも神様はいじわるなんだろう。
何も目の前で見せつけてくれなくてもいいのに。

もうあふれる涙を抑えることもできなかった。

いつの間にか包装が終わっていた はたきが手元にある。

仲睦まじい二人に声をかけることも出来ない。

ただただあふれ出る涙で商品をぬらさないように 後ろを向き 声を出さないよう嗚咽を漏らす。
仕事中だということを忘れてはいないが、久々に訪れた感情になす術もない。
こんなに泣くのは8年ぶりだ。
8年前のあの時に恋も涙も封印してしまったのだから。

どのくらい泣いただろうか、あの二人はまだアクセサリー売り場にいる。
時間にしたら10分位だったのかも知れない。
二人に気づかれないように水場に行き、顔を洗う。
シャキッとした顔を叩き 
「大丈夫。8年間も泣かなかったんだ。もう泣かない。ちゃんと仕事しよう。」
そう自分に言い聞かせた。

カウンターに戻ると 二人は既にカウンターの前で待っていた。
「お待たせして申し訳ございません」
良かった。私自然に笑えてる。


あなたは私の顔を見るなり驚いたような、そして辛そうな表情になる。
それもそうだ。
顔を洗ったところでこの真っ赤になってしまった瞳は隠すことが出来ないのだから。
「あの・・・何かあったのですか?」
あなたに問われた。まさかあなたのせいで泣いていました。なんて言えるはずもなく 目にゴミが入ったとごまかした。

あなたには見透かされているかもしれない。
私の嘘なんて百も承知の様な余裕の表情で微笑んでいた。
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