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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第16章 第十六話


いくら親しい間柄の人間であっても、今の彼女の精神状態には、どんな男も同じに見えてしまっているのではないか、木手はそう考えた。

「知念クン、出直しましょう」
「なんで、なんでだよ、如月!俺がどれだけお前に会いたいと思ってたと…!」

愛しさを感じている人間に、頑なに拒否の姿勢を示された知念は、彼女の気持ちを慮る余裕を無くしてしまっていた。
ただ自分を拒絶された悲しさに、知念は震えてしまっていたのだった。

如月は自身の体にかかっていた薄い布団を乱暴に引っ張り上げて、すっぽりと被り、その中に隠れてしまった。


「…見ないで!こんな汚い私なんて、見て欲しくないの…!」


如月の言葉に、木手に抑えられていた知念の動きがピタリと止まった。
彼女は二人の事を思い出したくもない記憶の中の「男」に重ねて見ていたわけではなかった。
ただ、非情にも複数の男に汚された自分の姿を、親しい二人に見られたくなかっただけだった。
特に、大好きな知念には。

「…何言ってるんばぁ?汚くなんかないさー」

汚いなんて微塵も思っていない。だから、お前をこの腕の中に閉じ込めさせて欲しい。
もう誰にも、何にも傷つけられない様に、お前を傷つけるもの全てから、俺が全部守るから―。

そんな想いを抱きながら、知念はまたゆっくりと如月に近づこうとした。
けれど今の如月にそんな知念の想いなど量れるはずもなく、布団の下からくぐもった声で知念を拒否する声をあげた。

「来ないで!お願い!出て行って!」

二度目の拒絶に、知念は悲しそうな顔で布団に隠れて見えない如月の姿を黙って見つめた。
木手はそっと知念の背中に触れ、振り向いた知念に首を横に振って見せた。

「…美鈴、俺達はいつでも君の味方です。それだけは忘れないでください」

そう木手が静かに言うと、布団が少しだけ上下したように見え、それを見た木手は彼女に自分達の気持ちは十分伝わったと判断した。

「知念クン、今日はもう帰りましょう…」

木手に促され、半ば木手に引きずられるように知念は病室を後にした。
頭では知念もこれ以上如月に接触するのは無理なことだと分かっていた。
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