第21章 第二十一話
それがどんなに嬉しかったか。
どんなに自分の力になったか。
知念は言葉では語りつくせそうになかった。
「ふふ、ライバルなのにね。気が付いたら、応援しちゃってた」
「…そうか」
「……うん。それが、知念君に対する、私の気持ちの答えなのかなって思った」
「俺も、あの声援で自分でも驚くくらい力が出た。それが、答えなんだと俺も思う」
もうそれ以上言わずとも、お互いの気持ちは充分2人とも分かっていた。
けれど、これまで気持ちを伝えずにすれ違いばかりだった2人は、今度こそ気持ちを言葉にのせて相手に伝えようとしていた。
もうこれ以上、間違えないように。
自分達も、周囲の人間も傷つけないように。
「……美鈴、俺はお前が好きだ。中学の時から、ずっと好きだ。そしてこれからも、その気持ちは変わらない。だから、俺の彼女になってほしい」
「嬉しい、ありがとう。…私も、中学の時からずっと知念君が好きだよ。離れてても、ずっと好きだった。なのに、今まで素直になれなくて、ごめんなさい」
「美鈴だけのせいじゃない。……俺達の間には、色々あったから。気にさんけー(気にするな)」
知念の骨ばった手が、ゆっくり優しく如月の頭を撫でる。
触れられた箇所から熱が全身を駆け巡り、如月の頬はどんどんと赤みを帯びていく。
そんな如月を見て、知念の体もまた同じように熱いものが全身を駆け巡っていく。
その熱を伝えたい、自分がどれだけ彼女のことを想っているのか言葉以上に伝えたい。
そんな衝動に駆られて知念は、何も言わずに如月をぎゅっと抱きしめた。
驚いたのか一瞬身を固くした如月だったが、すぐに彼女も知念の背中に腕を回して、同じように知念にぎゅっと抱き着いた。
互いのぬくもりを感じて、ようやく2人は安堵のため息をつくことが出来た。
これから、2人の間で何が起こったとしても。
奇跡のように、運命のように繋がった強固な絆は簡単に解けることはないだろう。
きらめく日差しの中で、知念と如月はいつまでも互いの熱を感じていた。
―Fin―