第16章 第十六話
如月の事件から1週間後、彼女に乱暴を働いた男達は一人残らず捕まった。
その逮捕に一役買ったのは、やはり知念達が如月の母親に伝えたあのSNSの情報だった。
そして事件が起こった周辺住民から寄せられた多数の目撃情報が寄せられたことも、素早い逮捕に繋がった。
SNSに如月に成りすまして登録をしたアザミもまた、SNSでの如月に成りすまして書いた日記や犯人達とのメールのやり取りで犯罪を助長させたこと、名誉棄損の罪で、逮捕されることとなった。
田村や取り巻きの女子はこれといった罪には問われなかったが、彼女達は周囲の冷ややかな目にさらされることとなり、肩身の狭い思いをしないではいられなかった。
犯人逮捕の報を受ける少し前、知念達は如月の意識が戻って容体も安定したと、如月の母親から連絡を受けていた。
その知らせに知念達は皆ほっと胸を撫で下ろした。
「良かった、本当に、良かった…」
知念は人目も憚らず、涙を流して喜んだ。
それにつられるように木手や甲斐達もまた、瞳を潤ませた。
「早く行ってやれよ、寛。永四郎も、さ」
とん、と甲斐と平古場に背を押された知念と木手がお互い顔を見合わせた。
知念の頬に伝う涙を筋を見ながら、木手はほんの少しだけ、優しく微笑んだ。
「行きましょう、知念クン」
「あぁ」
知念と木手は連れ立って、如月のいる病院へと足早に向かった。
如月の母親に教えられた病室へと逸る気持ちを抑えて、二人は歩みを進める。
病室に向かう途中で、如月の母親とすれ違った。
「あら、知念君、永四郎君!もう来てくれたの?」
「すみません、連絡を受けたら居ても立っても居られなくて…」
「いえ、いいのよ。ありがとう。あの子もきっと喜ぶわ」
病室まで如月の母が知念と木手を案内し、静かに扉を開け、二人に中に入るように促した。
「私はちょっと先生のとこに行ってくるから、美鈴のことお願いね」
「はい」
如月の母は薄く微笑んで、病室から離れて行った。
彼女の後姿を見送って、知念と木手は病室へと足を踏み入れた。