第15章 第十五話
ちっ、と木手が舌打ちしたかと思うと、彼はおもむろにアザミの体を手すりのこちら側に引き寄せて、そのままどさりと彼女の体を床に叩きつけるように、アザミの首から手を放した。
ゲホゲホと咳き込むアザミに田村は近寄り、背中をさすろうとしたが、アザミに勢いよく払いのけられた。
赤く木手の手の跡の残る首をさすりながら、アザミは木手をじっと睨み付けた。
「…っ、なんで…なんでそんなにあの子が大事なの…?なんで、私じゃなくて、あの子なの…?」
アザミの両目から流れ落ちる大粒の涙を、木手は冷たい目で見下ろした。
「君には一生分からないと思いますよ」
そう吐き捨てて、木手は屋上を後にした。